One Night Lover

華乃の選択

「初めまして。山下海斗です。」

海斗は藤ヶ瀬に挨拶をした。

「あ、僕はここのシェフの近藤春紀です。
ハルちゃんて呼んでください。」

ハルちゃんは2人の間の重たい空気を読んでわざと明るく振る舞った。

「あ、藤ヶ瀬竜です。華乃がお世話になってます。」

藤ヶ瀬は名刺入れを胸の内ポケットから出すと
二枚抜いて、ハルちゃんと海斗に渡した。

会社名とその肩書きを見て
海斗はますます敵わないと思ってしまいそうだったが
華乃は海斗にゴメンとでも言うように目配せをして少し安心した。

「あの、華乃とはもう別れたんでしょう？

今更、何しに来たんですか？」

ハルちゃんは海斗の味方だから
藤ヶ瀬がどんなに自分好みのタイプでも
海斗のために戦う姿勢だった。

「あの…山下さん？

少し私と話せませんか？」

藤ヶ瀬は海斗にそう言って
ハルちゃんに了解を得た。

「この時間ならお店も空いてるし…いいよ。
海斗話して来な！」

そして海斗と華乃と藤ヶ瀬が奥のテーブルに座った。

「華乃の事を愛してます。

申し訳ないが…貴方から華乃を奪うつもりで来ました。」

藤ヶ瀬は海斗に宣戦布告をしたが
海斗は肩から力が抜けていてあっさりとこう言った。

「わかりました。

華乃ちゃんがそうしたいなら俺は無理に引き止めません。

だから華乃ちゃんの好きに決めていいよ。」

そう言って華乃を見つめて微笑んだ。

藤ヶ瀬は自分とは全く違う海斗を見て
少し怖くなった。