One Night Lover
拗れていく未来
健はかなり嫉妬深い。

そしてネチネチとその視線だけのことで華乃は健から責められた。

「な、あの部長とどこまでいったんだよ?」

「そんな話するなら帰ってよ。

私のこともう信じられないんでしょ?

ずっと疑いの目で見られるんでしょ?

もうそんなのなら終わりにしよう!」

華乃の開き直った態度に健はもっと腹を立てた。

「俺と別れてアイツの女になるつもりかよ?

華乃があんな男と上手くいくわけ無いだろ?

知ってるのか?

アイツはかなり良いとこのボンボンらしいぞ。

華乃みたいな庶民なんか本気で相手すると思うか?

お前なんか遊ばれて飽きたら捨てられるんだよ。」

華乃はその言葉にショックを受けた。

あのマンションに入った時、
藤ヶ瀬とは住む世界が違うと思った。

ほんの一握りの金持ちしか住めないようなあの場所に
部長とはいえ、普通のサラリーマンが簡単に住めるとは思えなかった。

「華乃、目を覚ませよ。」

華乃は健の言葉に傷つきながら必死で藤ヶ瀬への想いを隠した。

「私は部長とは最初からそんな関係じゃ無い。

健はどうかしてる!」

でも健は華乃が何を言ってももう信じられなかった。

「華乃…今日全然良くなかったろ?

お前感じてなかったろ?」

「健が変なこと言うからだよ。」

「もうアイツじゃないと感じないのかよ?」

華乃はそれ以上聞きたくなくて部屋を飛び出した。

こんな時まで藤ヶ瀬に逢いたいと思ったけど
さすがにこの状況でそれは出来なかった。

昨日あんなことがあって
かなり逢いづらかったが
結局は渉しか頼る人が居なくて渉を訪ねた。

しかし渉もまだ帰ってなかった。

それでも渉の部屋以外、
もう行くところは何処にも無い。

華乃は渉の部屋の前で渉が帰って来るのを待った。

少しして誰かが来る足音が聞こえた。

華乃が渉だと思って迎えに出ると
渉と別れたばかりの渉の元カノがこっちに歩いて来るのが見えた。

華乃は反射的に二人に見つからないようにその場から逃げた。

華乃は今夜、渉が元カノと寄りを戻して
昨日、華乃にしたみたいに彼女を抱くのだろうと思うとなんとなく嫌な気分になった。


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