One Night Lover
間違いだらけの浮気
華乃は藤ヶ瀬が部屋に来るのをもう何日も待っている。

部署も離れ、会社でほとんど会う事もなく
1日が過ぎる。

こちらから連絡してみるが
藤ヶ瀬は忙しいのか電話にほとんど出ない。

メッセージを送っても
返事はいつも忙しいを理由に断られるばかりだ。

それでも今夜はやっと帰りに部屋に寄ると返信が来たので
華乃は退社時間とともに会社を出て
夕飯の支度をしてシャワーを浴び、
藤ヶ瀬が来るのを待っていた。

しかし何時間待っても藤ヶ瀬は現れず、
華乃はそのまま眠ってしまった。

目が覚めたのは2時過ぎで
もちろん藤ヶ瀬の姿はなかった。

華乃はだんだん不安になる。

最近の藤ヶ瀬の行動はかなり不可解だった。

だいたい藤ヶ瀬のような何でも持ってる男を周りの女が放っておくはずがない。

自分がそうだったように藤ヶ瀬は飲みに行った席で一晩限りの女を拾う事もある。

自分みたいな中途半端な女は
いつ飽きられてもおかしくない。

華乃は自分にまったく自信がなくて
ネガティブな考えばかり頭に浮かんだ。

結局デザイナー室に戻る話は滞ったままで
華乃はこのままこの会社にいていいのかさえ不安になる。

雨来梨沙の事務所に入っていたらもっと充実した毎日が送れたのだろうか?

あの時の華乃には藤ヶ瀬しか見えてなかった。

いつも流されて生きてる自分を不甲斐ないと思いながらも
華乃にはまだそれを変えるだけの決意が足りない。

「ごめん、今夜行けなくなった。」

SNSにメッセージが来ていたのに気づいて
大きなため息をついた。

こんな時、なぜかいつも華乃は渉を思い出す。

渉が近くにいたらきっと渉に相談しただろう。

渉はいつも華乃の味方で
いつも華乃は可愛いとか綺麗だと言って
華乃に自信を持たせてくれた。

華乃は無性に渉に会いたくなった。

夜が明けて会社に行く電車に揺られていると
同じ車両に健が乗ってきた。

「あ…」

健は華乃を見て何となく気まずそうだったが
華乃は

「おはよう。」

と挨拶だけした。

健も軽く挨拶だけすると華乃の隣に立った。
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