One Night Lover
竜は麗奈から聞いた菜那の近況がずっと心に引っかかっている。

「こんなこと藤ヶ瀬くんに言っていいのかわかんないんだけど…

実はね、菜那にこの前会ったんだけど…
元気がなくて…聖司とうまく行ってないのかも。

誘ってもなかなか出て来なくなったし…

あの2人…何かあるんじゃないかな?」

幸せに暮らしているなら忘れることも出来たのに
不幸になってるとしたら
菜那にどうやって詫びたらいいかわからなかった。

竜は麗奈から菜那の連絡先を聞きだそうとしたが
麗奈は

「菜那に聞いて見るね。」

と言って教えてもらえなかった。

そこで竜は自分の連絡先を麗奈に渡して
菜那に連絡するように言ってみてほしいと頼んだが
もちろん数日が経っても菜那から連絡が来ることはなかった。

そこで竜は聖司を探した。

聖司の勤務先は昔の仲間を頼って見つけることが出来た。

竜は聖司の勤めている会社まで出向き、
なんとか聖司に会えた。

聖司は突然現れた竜にかなり驚いていた。

そして大人になって更に磨きがかかった竜を見て
またあの頃の劣等感が蘇った。

竜が菜那を取り返しに来たような気がして
内心穏やかではなかった。

しかし、もう菜那はもう自分の物で
今更竜が現れた所で手遅れだ。

聖司はそう思うことで竜より上に立った様な気持ちでいた。

「懐かしいな。どうしてここがわかった?」

「聖司、菜那に逢わせてくれないか?」

竜が挨拶もせずに菜那に逢いたいと言ってきて
聖司はかなり動揺したが
菜那はもう自分モノだ。

そう思うことで気持ちを安定させ
出来るだけ冷静に見えるように

「いきなりどうした?」

と余裕ある態度で聞き返した。

今の聖司は竜にとってまるで別人の様だった。

昔は何でも気軽に話せた聖司だったが
今は冷たく、近寄りがたくて目の前に高い壁があるような感じだ。

「菜那と結婚したのは知ってる。

頼む!逢わせてくれ。

菜那に謝りたいんだ。」

竜はただ菜那に会いたかった。

そんな竜を見て、聖司は少し気分が良かった。

父親のことで竜がかなり傷ついたんだと思うと
なんだかスッキリした。

「やっと本当の事がわかったんだな。

自分の父親がどんな男かわかったろ?」

聖司は竜を菜那に会わせようと思った。

今の菜那を見たら竜はもっと傷つくだろう。

そう思うだけで自分の劣等感が少し解消される気がした。

その時の聖司は完全に自分を見失っていた。

そのことに自分自身が気がつかないくらい
聖司の心は壊れていた。
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