運命の出会いは誓いのキスから 《番外編追加》
掴んでいた手は離され、総一郎さんはもう一度目の前に手を差し出した。

怖い。でも、詩織さんのあの堂々とした姿に憧れていた。お兄ちゃんとの結婚でいろいろ言われても一切、気にせず幸せだと主張していたあの姿に。


勇気を出して上げた手は震えていて、目の前に差し出された総一郎さんの手をなかなか取れない。

でも総一郎さんは、そんな躊躇する私の手をギュッと掴んでくれた。


「手を出してくれただけで充分。後は俺が連れていってあげるからこの手を離さないで」


コクンと私は頷いた。
怖い、どんな目で見られるのだろう。


でもこの手は離さないと強く掴まれているから怖くない。そう言い聞かせて、私は総一郎さんと手を繋いで社内へと向かった。
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