お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 その謝罪の言葉は耳を凝らさないと聞こえないくらい小さくて、けれどとても苦しそうに聞こえて、夢うつつのはずの澄花の心にも、まっすぐに届いていく。

 額を撫でた手は今度は澄花の足へと移動し、踵を支えながら、パンプスを脱がせていく。左、右と、一足ずつ。まるで姫君に仕える侍従のように、うやうやしく。


(ああ……龍一郎さん……)


 それは間違いなく、夫の声、そして夫の手だった。

 両方の靴が脱がされたあと、今度はワンピースのファスナーに指が触れる。
 ゆっくりとファスナーが下ろされてワンピースが脱がされる。

 体にぴったりだったワンピースを脱がされて、呼吸が楽になった。


「は……」


 澄花が声を漏らすと、唇になにかが触れた。


(くすぐったい……)


 顔をそむけると、ふっと笑う気配がする。


「この手で触れるだけだと自分に言い聞かせても、我慢ならなくなるな……」


 そむけた顔が大きな手で包み込まれ、そして唇に、柔らかいなにかが押し付けられる。
 けれどそれは一瞬で、すぐに離れて、そのまま額へと移った。
 チュ、チュッと、額の上で音が鳴る。
 まるで無我夢中だ。

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