お気の毒さま、今日から君は俺の妻

(夫婦はお互いに支え合うものなのに……そんなの当然のことだったのに……)


「っ……」


 澄花の唇が、わななく。
 なにか声を出そうにも言葉が出てこない。

 けれど腹の底から熱い塊のようなものがこみ上げ、喉がぎゅーっと締め付けられて、目の奥が熱くなった。

 澄花はこぶしをきつく握りしめる。

 どうしたら正解なのか、わからない。
 龍一郎になんといえばいいのか、わからない。
 どうしたら彼を傷つけずに春樹のことを話せるか、わからない。

 どうしたら、どうしたら――。

 昨晩と同じように、眩暈がし始める。

 澄花はとっさにドレッサーに手をついていた。

 ぐっと奥歯をかみしめて、目を閉じる。

 懐かしい春樹の笑顔と……それから龍一郎の、少し困ったような、遠慮した微笑みが脳裏に浮かぶ。


(……ここで迷っているから、私はダメなんだ……!)


「龍一郎さんっ!」


 澄花は悲鳴を上げるようにして夫の名前を呼び、部屋を飛び出していた。


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