お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「龍一郎さんっ……」


 澄花は泣きたくなるのをこらえながら、一階、二階、すべての部屋をひとつひとつ確認していく。
 だが、葛城邸のどの部屋を見ても龍一郎の姿はない。
 昨晩帰って来た時とまるで変わらない、静かな空気に、澄花は呆然となった。


「昨日のあれが……夢?」


 だがあの熱っぽい囁きが、あたたかい手が、キスが、懇願が、告白が、自分が都合よく見た夢だとはとても信じられない。

 澄花はどうしていいかわからないまま、澄花は階段の下のほうで座り込んだ。


「はぁ……」


 ため息をつきつつ膝を抱える。


「そんなはずない……あれは現実だったわ……!」


 思わずそうつぶやいていた。

 確かに龍一郎はドレッサーにもたれるようにして眠っていた澄花を抱き上げベッドに運び、パンプスとワンピースを脱がせ、ピアスを外した。
 たったひと月程度とはいえ、澄花は龍一郎に真綿でくるまれるように愛されたのだ。彼のぬくもりを今さら間違えるはずがない。

< 204 / 323 >

この作品をシェア

pagetop