お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 考えてみれば、いつも龍一郎はまっすぐに思いをぶつけてきてくれた。
 だが澄花は自分の気持ちをいつも言葉にすることが出来なかった。


(私も伝えなきゃ……)


「龍一郎さん、さっきのは、勘違いじゃないんです」
「は……?」


 また龍一郎が怪訝そうに眉根を寄せる。本当に、意味が分からないと顔に書いてある。


「だから……私……あなたに好きでいてもらいたいって、思っているんです」


 その瞬間、龍一郎はビクンと肩を震わせる。


「そして私も……龍一郎さんのことを……すっ……」


 好きだと口にしかけて、唇がわなないた。


(ど……どうしよう、恥ずかしい……!)


 もうこれは、澄花にとって愛の告白も同然だった。

 そうだ。そうなのだ。

 確かに龍一郎とはお金目当ての契約結婚だったはずなのに、毎日とろけるように愛されて、大事にされているうちに、龍一郎のことをひとりの男性として意識するようになった。そしてただ愛されるだけではなく、彼と本当にふたりで人生を歩めたら、龍一郎の支えになれたらと、真剣に思うようになっていた。

< 242 / 323 >

この作品をシェア

pagetop