お気の毒さま、今日から君は俺の妻

「私を傷つけたくてしたことじゃないって、わかってますから……もう気にしないで」


 いや、いくら気にしないでと言ったところで、龍一郎は絶対に気にするし、これからも忘れないのだろう。
 澄花は握られていない右手を伸ばし、そっと龍一郎の頭の上に置いた。そして、ゆっくりと手のひらを動かす。
 さらさらと指の間を黒髪が流れていく。いつまでも撫でまわしたくなるような、美しい髪だ。


「――澄花?」


 突然頭を撫でられて、龍一郎は不思議そうに顔を上げる。


「なんとなく……撫でてあげたくなって」
「なんとなく……?」


 驚かされているのはいつも澄花のほうなのに、澄花がここに来てからずっと、龍一郎は驚いた顔をしている。


(本当に、私が来ること想像すらしてなかったんだ)


 十歳も年上で、誰もが見惚れるような美貌と地位と財力を持ち、人に命令することに慣れ切っている龍一郎だが、こういう時、たまにふとした瞬間に、澄花は彼の中に少年のような純粋さを感じる。


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