お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「野菜は俺が洗いますよ」
エプロンをつけ終わった基が隣に立つ。
「ありがとうございます。ではお願いします」
澄花は野菜が入ったかごを基にバトンタッチして、横に一歩ずれる。
その時、見るつもりはなかったのだが、基の腰のあたりで結ばれた紐が揺れているのが目に入った。
(あっ、結び目が縦になってる……!)
内心そう思ったが、自分が口を出すことではないので、こみ上げてくる笑いをグッとこらえて包丁を握った。
(ここに龍一郎さんがいたらどうしたかな……? 器用だから、蝶々結びはできそうだけど……)
龍一郎もやはり基と同じように、生まれて一度も包丁を握ったことがないタイプだ。
そして家事は全て外注でもいいというくらいだし、特にこだわりも感じない。
だが澄花が作る慎ましい料理は、まるで三ツ星レストランのシェフが作ったかのように絶賛し、あれやこれやと褒めたたえるので、聞いているとたまに恥ずかしくなる。
(龍一郎さん、褒めなきゃって感じではないのよね……純粋に『澄花はすごい』って感心されてるから、なんだかそわそわするし……嬉しいけど)