お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 そこでようやく澄花はいつまでも抱き上げられている自分に気が付いて、降りようと足をばたつかせた。


「あ、あの、私、立てますっ……」
「そうか。だが私にはずぶ濡れの女性を立たせる趣味はないのでね」


 問答無用で澄花の提案を退け、抱く腕に力を込める。

 いつまでも抱かれているのもどうかと思うが、氷でできたような顔を見ていると、自分が何かを言ったところで簡単には受け入れてくれなさそうな、そんな気配をその男から感じる。

 だが同時に、女性スタッフを連れてきたのは、たぶん自分を気遣ってのことだと、澄花は気が付いていた。


(あの場には男性もいたけど、声を掛けたのは女性だった。だから変なことにはならないと思うけど……でも……ちょっと待って……この人……葛城様って呼ばれてたわよね?)


 副社長で、名前が葛城ということは彼はKATSURAGIの御曹司ということになる。確か今日のパーティーの趣旨は、新規事情の立ち上げと、新しく就任した副社長のお披露目だったはずだ。

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