お気の毒さま、今日から君は俺の妻

(この人は葛城グループの、御曹司で副社長……? パーティーの主役じゃないの!)


 澄花の顔から、サーッと血の気が引いた。

 いくら会社の人間が迷惑をかけたからといって、副社長自らパーティーを抜け出すのはやりすぎなのではないだろうか。


(シャワーを借りられるだけで充分なのに……!)


「あの、」
「話はあとだ」


 また、澄花の言葉は遮られてしまった。


(少し横暴じゃない……?)


 内心ムッとしたが、結局このままで困るのは澄花のほうだ。


(シャワーを浴びたらさっさと帰ればいいわ……)


 仕方ないと、今は黙って状況を受け入れた。

 目的の階で停まったエレベーターの扉がゆっくりと開く。給仕の先導で廊下を歩き、突き当りのドアの前に立った葛城は、目線を澄花に向けた。


「キーはスーツの内ポケットの中にある」
「あ、はいっ……失礼……します」


 言われて彼のスーツの中に手を入れ、ミッドナイトブルーのカードキーを取り出した。極力体に触れないように努力したが、かすかに葛城が身じろぎしたので、澄花まで緊張してしまった。


< 33 / 323 >

この作品をシェア

pagetop