お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 よしと気合を入れたところで、選ぶ服はいつも同じ。黒いブラウスに黒いスカート。多少襟や袖、丈の長さが変わっても、色は常に黒だ。

 適当にそれらを取り出し、ベッドの上に置いた。冬の間はよかったが、これから春になると黒づくめはかなり目立つようになる。

 あれこれと言われることを思うと少しだけ気が重くなるが、喪に服すのだから黒以外ありえない。

 愛する人を喪った澄花は、七年間ずっとこのスタイルを通している。今後も変えるつもりはない。

 身支度を整えた澄花は、チェストの上に置いてある朱塗りのお盆に向かって、にっこりと微笑んだ。お盆の上には、写真立てと、水を入れて花を浮かべたガラスの器がのっている。

 愛おしいと思う気持ちを込めて、写真フレームをそっと指でなでる。


「行ってきます」



――――――――・・・




 いつもより早めに家を出たせいか、七時過ぎの社内はガランとしていた。


「さすがに早すぎたかも……」


 澄花は苦笑しながら受付が座るテーブルに飾ってある給湯室に花瓶を抱えていき、給湯室に置いてあるハサミで水切りをしてから新しい水に替えて戻る。


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