この恋が実るなら


そう言って寧々が立ち止まる。


「ほら、あなたの大好きな人が待ってるわよ。」


寧々が指した方を向くと、そこには山口が立っていた。


「え、でも、なんで?山口さん、寧々さんに伝えたんじゃ…!?」


突然の事に事態を飲み込めない実花が、山口と寧々の顔を見る。


「じゃ、私はこれで。」


ニッコリと微笑むと、寧々は脇道から公園の外に出て行った。


山口と2人取り残された実花は、何が起こっているのかわからない。


「藤谷」


山口の優しい声が響いた。


「俺は、藤谷が好きだ。ずっと、俺のそばにいてほしい。」


実花は目の前で言われた言葉に、耳を疑う。


「え、山口さんは寧々さんのこと…」


「確かに、寧々さんのことは好きだった。でも、憧れというか、本当の恋愛感情とは違うものだったって、気付いたんだ。

それは、藤谷のおかげ。藤谷が俺のこと心配して、あれこれ力になろうとしてくれて、それまで気付いてなかった藤谷のいいところがどんどん見えてきて、気が付いたらどうしようもなく、好きになってた。


藤谷を好きだ、大切にしたいって思う気持ちは、今まで感じたことのない特別な感情なんだ。」


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