お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
「やっぱ映画館は真ん中だよな」
「うん、音が違う」
「だよな」
そんなことを言いながら智哉が予約してくれていた劇場中央の席に二人で座る。
私は車での言い合いが嘘のように話が合って吃驚していた。
無理に合わせていない。嫌われてもいいから合わせる必要などないからだ。
だけど、ここまで素を見せて、なおかつ好みが合うのは本当に初めてだった。
なんだろ、楽しい……かも。
今までは好みってすり合わせるのが普通だと思っていたのに。
過去、自分を殺して達彦の隣で笑っていた時を思い出しかけた時、コツと頭を小突かれた。
「何ぼけっとしてんだよ。俺といる時は俺に集中しろ」
振り向くと不満げに眉を顰める智哉。
出た、俺様発言。
これさえなければ、すごくいいおと……。
「って、いやいや違う」
「何が?」
「な、何でもない」
顔を横に振ると、上映時間になって徐々に照明が落ちていく。
「お、始まる」
待ち遠しそうに笑む横顔が暗い視界の中で残像としてしばらくちらついて、新作映画の予告も集中できなかった。