お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
「面白かったな」
映画が終わって開口一番智哉が言った。
二時間ほどの映画はあっという間に終わってしまった。
終始展開の速さにハラハラして、手に汗握って見入ってしまった。
必要時間内に収めるために少し荒っぽい描写もあったが、最後はハッピーエンドですっきりと心にわだかまりなく終わってよかった。
「うん、これで完結するのが寂しいくらい」
「だよなー。でも、下手に引き伸ばしてだれるよりはいいまとめ方だった気もする」
ぞろぞろと人の波に従いながら映画館の出口に向かいながら、智哉が携帯を手に「あ」と声を上げる。
「着信あったのか」
上映中マナーモードにしていたから気づかなかったらしい。
「かけてきていいよ」
少し眉を寄せた顔から察して折り返さないといけない人物なのだろう。私がそう言うと智哉の表情が解れた。
「悪い、仕事関係者なんだ。すぐ終わるから出口で待ってて」
「わかった」
携帯を操作しながら人混みから離れていく智哉の背中を一瞥して、私は流れに乗って映画館の出口まで来た。
トイレでも済ませとこうかな。
ただ待つのも手持無沙汰でそう考えたが、入れ違いになるのも面倒だなと迷う。
結局、その場に留まることに決めた時、
「あれ、藤野さん」
甘ったるい声で呼ばれて、身体が硬直した。
振り向きたくない。
聞き間違えであってほしいけれど、ほぼ毎日、部署が同じだから強制的にその声と姿に触れている身から間違えることはないだろう。
恐る恐る振り返るとそこにいたのは予想通りの人物。
同じデザイン課の石原ありさ。
二十五歳。
私の一つ後輩で社長の娘。その隣には私の元カレ、達彦の姿があった。
そう、私はこの女に達彦を取られた。
いや、違う。『乗り換えられた』だわ。
達彦が何の取り柄もない私より社長令嬢のありさを選ぶのは当然といえば当然かもしれない。