お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
「藤野さんにこんな素敵な婚約者がいらっしゃるなんて驚きました」
「いえ、そんな大した者ではないので。彼女にいつも自分勝手だって怒られているんですよ」
なんてことを!
智哉が自分勝手なのは本当だが、これでは私が気が強くて、かかあ天下みたいではないか。
「しっかり者で助かってます」
だけど、すぐに笑顔で智哉が続けて言ったので、私は黙るしかなかった。
この場を取り繕う嘘だとわかっていても、堂々と褒められると照れで顔が熱くなった。
あー、早くどこか行って!
智哉の初対面時の似非笑顔とありさたちを交互に見つつ、激しくそう願うしかない。
「藤野さんたちこれからごはんですか?よかったら一緒に食べません?」
いやいや、絶対嫌だし!
何が悲しくて元カレと奪った女を前にご飯を食べないといけないのか。
忌み嫌う二人と似非王子の男の三人を相手するのは無理だ。
考えただけで、地獄絵図だ。
「すみません、これから彼女の実家で食事する予定なんです」
私が拒否する前に智哉が即答した。
あの誰もが魅了される美しく完璧な笑顔に少しの罪悪感を滲ませて。
その絶妙に庇護を駆り立てるような女心をくすぐる表情に、ありさがほわんと夢見る瞳になった。
「それは、残念ですね」
「ええ、また次の機会にお願いします。そろそろ行こうか、桜子」
「う、うん」
促されておどおどしながらも智哉についていく。
隣に並んだ時、不意に手を引かれた。
智哉が手を繋いできたのだ。
驚いて反射的に手を引っ込めようとする私の手を智哉は逃がさないようにぎゅっと包み込む。