お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
「やっぱり、突然、私も押しかけて迷惑じゃないかな……」
目の前の大きな門扉を見上げながら、私はごくりと喉を鳴らして言った。
幼い頃からこの一帯一大きなお屋敷で何度か前を通り過ぎてきたとはいえ、いざこの中に入るとなるとその佇まいからの圧力が全身にのしかかってくるようだ。
「ばあさんにも言っといたから大丈夫だろ」
隣の智哉は自分の実家だからけろりとした顔でさっさとインターフォンを押してしまう。
心の準備が!と言う前に、マイクから『どうぞ』と声が聞こえて勝手に扉が開いた。
ここまで来たら腹を括るしかない。私は一度大きく呼吸をして、智哉に続いて『葉山』の門を潜った。
玄関を入るとお手伝いさんらしき人が「こちらです」と座敷に案内してくれた。
よく手入れされえた庭が見える座敷。
呉服屋の娘だけど、うちの店より広い。
新しい畳のいい香りにそわそわしながら用意された座布団の上に座って待つ。
やがて襖が開いて入ってきた人は私を見て朗らかに微笑した。
「いらっしゃい、桜子ちゃん。お久しぶりね」
「あ、はっはい!ご無沙汰しております」
浅紫色の着物をきっちり着こなしたその人は美しい白髪を結い上げて、美しい動作で一歩ずつ畳を歩く。
数年前に一度会った時と同じ、気品で溢れていて隙がない美しさ。
智哉の祖母、葉山清子。