お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
清子さんが部屋に入っただけで空気が変わる。
凛とした佇まいに思わず目を奪われていると、テーブルを挟んで前に腰を下ろした清子さんの瞳と視線が合って、はっと我に返る。
「こ、心ばかりですが」
途中で買った地元のケーキ屋のシュークリームが入った箱をテーブルの上に置く。
本当は高級和菓子とかのほうがいいのではと思ったけれど、智哉が「ばあちゃんはここのシュークリームが好き」と言うから、通り道にあるし寄ったのだ。
清子さんは私に丁寧に礼をした。
「急にお呼びだてしたのにお気遣いありがとう。あら、もしかしてシュークリーム?」
「は、はい」
「私、ここのシュークリームが好きなの。みんなでいただきましょう」
そう言ってお茶を運んできてくれたお手伝いさんにシュークリームの箱を渡す。
お手伝いさんが座敷から出たのを確認して、清子さんはゆっくりと私たちに視線を移した。
「さて、早速だけど、あなたたち見合いはやめたんじゃなかったの?」
単刀直入でいきなり訊かれて私は言葉を詰まらせた。元々、私が断りの連絡を入れたのだ。
一度断ったのに「結婚したい」と言うなんて厚かましいにもほどがある。
「誤解です。全て丸く収まったから、他の見合い話はもう全部断ってください」
だけど、智哉がこれまた直球で返すから度肝を抜かれた。
もう少し、おばあさんのご機嫌を窺うとか説得しようって感じにならないのか。
きっと、こんなの納得できないってな……
「わかりました」
「ええ!?」
あっさり了承した清子さんに思わず声を上げてしまう。
むしろ、どうしたの?と清子さんに目で問われて私は迷った末に疑問を口に出した。
「あ、あの、本当に私でよろしいんですか?」
「それはどういう意味で?」
「私よりも条件のいい方はいらっしゃると思って……」
「そうね。でも、この子があなたがいいって言うならいいんじゃないかしら」
さらっと何の淀みもなく言い切られて私のほうが拍子抜けしてしまった。
清子さんはあんぐりと口を開けた私を見ておかしそうにふふっと笑った。