恋は盲目、愛は永遠
私がその人をちゃんと見ていない、というか、ぼんやりとしか見えていないのが分かったのか、その人は、震える私の両手をそっと握ると、自分の顔に持っていった。

「もう大丈夫だ」

そう男の人は言うと、私の手で自分の唇をなぞらせた。
上向きにカーブをしていた唇から、安堵の微笑みを連想した私は、つられて微笑んだ。

この人はまるで王子様みたいだ。
そんな連想をしたのは、過去生の夢を見たせいかな。

そのときブッブーというクラクションが鳴り響いた。
まるで止まっていた私たちの時間ときが動き出した合図みたい。

男の人は私の両手をギュッと握ると、顔から手を離した。
そして後ろをふり返り、「福島」と言った後、また私の方を見た。

「ここはつかえている。移動しよう」
「はい・・・あ、あの、このへんにめがねが落ちてませんか?」
「それなら私がもう拾った。では行くぞ」と男の人は言うと、私を抱きかかえた。
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