恋は盲目、愛は永遠
・・・そんなことできるわけないじゃない。

伊集院鈴太郎さんから逃げ出すなんて。
鈴太郎さんが私に飽きて捨てられるまで、私は逃げることも許されない。

私は目を伏せて鈴太郎さんの視線をそらすと、車を降りた。

「あのぅ・・・」
「どうした唯子」
「手はもう・・・」と私は言いながら、自分の手をしっかり握っている鈴太郎さんの手を見た。

鈴太郎さんもその手を見ながら、握っている私の手を持ち上げ、薬指にはめている結婚指輪をクルクルといじった。

「やはり痩せたな。指輪が少し緩くなってる」
「そうですね・・・」
「心配するな。私がご馳走をたくさん作ってやる」
「え!」
「なんだその顔は。これでも料理は上手なほうだぞ」
「そ、うですか」
「おまえが好きなたまご焼きとパンケーキはお手の物だ」

あ。やっぱり私が好きな食べ物、知ってるんだ。
私に聞いてないのに。

私は作り笑いを浮かべて「そうですか」と言った。
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