一途な社長の溺愛シンデレラ
外から聞こえた声にため息をこぼし、私は立ち上がって玄関のドアを開けた。
私の顔を見てほっと息をつき、それから思い出したように目をつり上げるその男は、数時間前に見たのと同じ細身のスーツをまとっている。
沓脱ぎの上にいる私が見上げなければ目が合わないくらいの長身をかがめて、彼は眉根を寄せた。
「……おまえ、また大音量で音楽聴いてただろう」
「まったく」とあきれたように鼻を鳴らすと、男は革靴を脱いでずかずか部屋に上がりこむ。
「ドアを叩く音が近所迷惑になるから、いいかげんやめろ」
「……それはこっちのセリフ」
「せめて音量下げろ。火事が起きたら逃げ遅れるぞ」
言いながら、短い廊下を抜けて部屋に入ったとたん、どさりと荷物を落とした。
ビジネスバッグと一緒に持っていた買い物袋から、りんごがひとつ転がり出る。
広い肩をわなわな震わせて、彼は振り向いた。
整った顔が思い切りゆがんでいる。
あ、不機嫌レベルMAXだ。と思った瞬間、雷が落ちた。