一途な社長の溺愛シンデレラ

 ヘッドフォンを装着し、座椅子にもたれてスケッチブックと向き合う。

『イメージ』は、常にそこにある。

 人の形だったり、動物だったり、幾何学模様だったり、ビビッドカラーだったり、セピアだったり、日常の景色に溶け込むようにして、形を変えながら次々と私の頭に浮かび上がる。

 私にとってのアート制作は、それらのイメージを切り出して絵画や立体作品に変換する作業にほかならない。

 そうやって吐き出す作業が必要なのだ。

 空気を入れ続けた風船が膨張してやがて破裂するように、私の頭もいつかイメージに埋め尽くされて爆発してしまう。

 そうならないように、私は毎日、『作品作り』と称してイメージを排出し続けている。




 どれくらい時間が経ったのか、耳を満たすロックミュージックの向こうから、ふと物音が聞こえた気がした。

 ヘッドフォンを外した瞬間、玄関をドンドン叩く音が部屋中に響き渡る。

「おい沙良!死んでるのか!?」

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