一途な社長の溺愛シンデレラ

 社長の役に立てるのなら。

 こうやってそばにいられるのなら。

 私はそれで十分だ。

「沙良……」

 不意に名前を呼ばれてどきりとする。

 見ると、社長は目をつぶったまま小さく身じろぎをし、もごもごと口を動かした。

「飯をちゃんと食え……」

 妙な寝言に、ふっと肩の力が抜ける。

「なんの夢を見ているの?」

 形のいい額にそっと触れる。

 少しの間、閉じた目元を見つめてから、吸い込まれるように顔を近づけた。

 小さく呼吸を続ける厚みのある唇。

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