一途な社長の溺愛シンデレラ

 引き寄せられるようにそっと唇を重ねようとした瞬間、部屋を震わせるような甲高い着信音が響いた。

 心臓が飛び跳ね、弾かれたようにベッドを離れる。

 それから部屋を見回して音源を探った。

 社長はまだ寝息を立てている。疲れて寝入っているのに起こしてしまうのは気の毒だ。

 数秒ほど周囲を漁った後、社長のジャケットのポケットで携帯が鳴っているのを発見した。

 音を切ろうと手にとった瞬間、知らない名前が目に飛び込んでくる。

 着信音が切れたのを見計らい、側面のボタンを操作して急いでサイレントモードに設定した。その途端、またしても同じ人物の名前が画面に表示される。


【園田麗子】





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