一途な社長の溺愛シンデレラ

 
 午後二時のまったりした空気にまぎれて、目の前に花が浮いている。

 桜色や黄色や白色のレースを編んで作ったような、華やかな色合いの繊細な花々が、中空で乱舞するように咲き誇っていた。

 気を抜くと思考を埋め尽くしてしまうそれらのイメージを振り払いながら、私はパソコン画面上のキャンバスにデフォルメしたうなぎを描く。

 再来月の土用の丑の日のためにうなぎ屋から依頼された、ポスター用のイラストだ。

 お店で撮ってきたうなぎの蒲焼の写真に照りと湯気を加工してシズル感を増していると、勢いよくドアベルが鳴って、御池さんが外回りから戻ってきた。

「あっちーな今日は」

 手に持っていたジャケットを椅子の背もたれにかけ、まっすぐ私のところにやってきては、ぽこんと頭を叩いていく。

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