一途な社長の溺愛シンデレラ
「……はい」
背中をたたかれて、手早く片付けをすませる。
ふたりで退室しようとしたところで、「結城社長」と後ろから声がかかった。
駆け寄ってきたのは、一番右端の席に肩身が狭そうに座っていた優しげな顔立ちの販売課課長だ。
宣伝広告の担当者だという彼は、穏やかな笑みを浮かべながらこちらに近づいてくる。
社長が私を見て、先に出てろというように目配せをした。
「いやあ、さっきのプレゼンよかったですよ。それで、うちの社長が結城さんとすこし話がしたいと……」
販売課長のそんな声を聞きながら会議室の外に出て、私はふうと息をこぼす。
慣れないものを着て、慣れない場所に立っていたから、身体がこわばっている。
廊下の突き当りの窓から外を眺めると、古い建物と新しい建物が混在した、ごちゃついた街並みが広がっていた。
悪くない景色だと思った。
きれいに整備された無機質なビルの群れよりも、どこか人の温かさが感じられるような、ごちゃりとした風景のほうが安心できる。
それはたんに、私がそういうごちゃついた街で育ったからだろうか。