一途な社長の溺愛シンデレラ
「してない。褒めてるんだよ。田中社長はな、ナイトハイクの趣味があるんだ」
二重瞼の大きな目が、なにかを企んでるようにきらりと光った。
「ナイトハイク?」
「ナイトハイキング。夜間登山のことだ」
「……なるほど」
プレゼンテーションの鉄則だ。
社長ははじめから、決定権のある太陽石鹸の社長にターゲットを絞って話を展開させていったのだ。
太陽石鹸のホームページには田中社長の趣味なんてもちろん載っていない。
それはつまり、結城遼介が念入りに下調べを重ねて、相手のプライベートな趣味まで調べあげてきたということだった。
かなわないと、心から思う。
私のデザインだけでは、どうあってもお金にはならない。
社長の徹底したリサーチと、プレゼン能力があってはじめて、私の作品は価値を生み出す。
私が今、ここで息をしていられるのは、すべて社長のおかげなのだ。
「よし、なにか食ってくか」