夜に咲く華
病んでる私と病んでる君
真昼の太陽がカーテンから射し込む14時、私の今日が始まる。
ベッドの上で寝起きの目を無理やり開けて、送るLINEは[し]と打ったら予測で出てくる[出勤します]それだけの淡白なもの。
怠い身体を起こして、熱めのシャワーを浴びる。
普通の女の子よりも念入りな入浴。
普通の女の子よりも際どい下着。
普通の女の子よりもパーツを強調させるメイク。
その割に地味な服装。
15時5分いつもと同じようにタクシーの手配。
いつもと同じ禿げかけたタクシードライバー。
いつもと同じ行き先。
「飛田新地、青春通り。」
15分の移動時間がようやく私用のLINEの返信時間。
コンビニの菓子パンをかじりながら返信していく。
未読は132件。

【おはよー。昨日はごめんねー!寝てたわw】
【まじか。分かった、時間空いてるときにまた行く!】
送信先は半分以上がホストかバーテンダー。
紙切れよりも薄っぺらくて、糸より細い人間関係。
楽しいわけではない。
楽しくないわけではない。
ホストが嫌いなわけでもない。
かと言って好きでもない。
つまりはただの暇つぶしで、ただの話し相手。
そしてただのsexの対象。
指名して店に行くホストもいれば、休みの日に付き合わせるだけのホストもいる。
セックスしたいときに呼び出してsexするだけのホストもいる。
指名してないホストの良い点は顔と金払い。
セックスするホストはそいつの指名客は大金払って抱いて欲しくて必死なのに【今すぐきて】それだけでノコノコやってくるっていう見下した考えと優越感。少しの快感。
店に通うホストはやっぱり夜中に一人でつまらないから暇つぶし。そして金に目がくらんで必死なのなまるわかりの接客ぶり。
思い入れもなければそれ以外の感情もない。
そいつらの客に対する嫉妬もなければ独占欲もない。
呼べば来る。ほしいものは買ってくれる。食べたいものは食べさせてくれる。sexしたいときは呼び出せばいい。それだけ。
こんなにたくさんの友達登録があるのに友達なんて呼べるのか。

「お疲れ様です、2420円です」
その言葉に3000円渡してタクシーを降りる。
「コーヒーでも買って」
お釣りは基本受け取らない。
気取ってるわけでもない。
ただ面倒くさいだけ。
店に入ると遣り手のおばちゃんに挨拶して地味な私服から巫女のコスプレに着替え前に出る。
「今日も一日よろしくお願いします」
おばちゃんから出された塩を舐めて験茶を飲む。
験茶は仕事前の験担ぎ。
今日も一日、上がります様に。
つまりは客がつきますように。
見世に出たら私は商品。
可愛らしく笑って男に手を振って、上がったら色っぽく喘いでみせて、早い時間のコースなら上げて15分でイかせて下ろす。
短い時間で私の手取りは15分5000円〜
1日の稼ぎは20〜30万円やそれ以上。
金はある。無駄に。
それでも稼ぐ。
それしかすることがないから。
私は求められ続けたいから。
< 2 / 3 >

この作品をシェア

pagetop