今宵、エリート将校とかりそめの契りを
ベッドに突っ伏していた琴が、わずかに身じろぎした。
その肩にかけられていた毛布がずれ、床に落ちる。
毛布が背を滑る感覚に、琴は目を覚ました。


「あれ……」


無意識に呟きながら、琴は一度辺りを見回した。


大きな格子ガラスの窓から、明るい太陽の光が射し込んでくる。
窓の下に置かれたストーヴの火は消えていたが、寝室の空気はそれほど冷たくはない。
窓辺には、ストーヴを囲むような陽だまりができている。
窓の外の陽は、もういくらか高くなっているのだろう。


琴はゆっくり上体を起こし、次の瞬間ハッとしてベッドの上に視線を走らせた。
しかし、そこには既に総士の姿はない。


(まさか、あの怪我で仕事に行ってしまったの? あんなに痛そうだったのに……)


昨夜、眠りに落ちてから、総士はずっとうなされていた。
苦しげな浅く速い呼吸を繰り返す彼を見て、ただただ心配で、琴は必死に看病した。


明け方になり、少し窓の外の空が白んできた頃、ようやく総士の呼吸が穏やかになった。
呻く声も聞こえなくなり、規則正しく上下する胸元を見てホッとして、琴は泣きそうになった。
おかげで気が緩んでしまい、総士が起きて身支度するのも気付かないほど、眠ってしまった。
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