今宵、エリート将校とかりそめの契りを
枝がわずかに撓るのを感じるが、予想通りなんとかぶら下がることはできそうだ。


(えいっ……!!)


心の中でそんな掛け声をして、なるべく勢いを殺して、残る片方の足を宙に浮かせた。


琴の全体重がかかった枝が、先ほどよりも強く撓る。
琴の身体が空中で上下に揺れた。
両手に力を込めて呼吸まで憚り、琴はその揺れになんとか耐えた。


やがて枝が静止して、琴は小さく息を吐いた。
今度はそろそろと手をずらし、より太い木の幹に向かって移動し始める。


枝は太く安心感はあるが、琴の小さな手では親指が回らず、ほとんど引っかけているだけの状態だ。
袴を穿いた足が宙を掻く度、手が滑りそうになる。
何度もヒヤッとしながら、琴はなんとか枝の付け根まで移動することができた。


足の指が攣りそうになりながら、木の幹に足の置き場を探す。
ちょうどいい窪みに爪先が引っかかり、琴はようやく大きく肩で息をした。
その時。


「……お前、いったいなにをしているんだ?」

「!?」


下から聞こえた呆れ果てたような声に、琴はビクンと身体を震わせた。
一瞬枝から手が離れそうになって、慌てて掴まり直す。
お腹の底からほおっと息を吐いてから、琴はそっと下を見た。
わざわざ確認せずとも、その声だけでそこに誰がいるかはわかり切っている。
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