今宵、エリート将校とかりそめの契りを
着物の長い袖を、邪魔にならないように後ろで結んだせいで、琴の白く細い腕は寒風に吹きっ晒しになっている。
肌に吹きつける風の冷たさもあり、琴の身体は、体幹からこむら返りのように小刻みに震えた。
(怖い……けど、こうする以外、方法が……)
この期に及んで怯みそうになる自分を叱咤して、琴は思い切って片手を窓枠から離した。
身体を捩じり、枝に向かって手を伸ばす。
無事に掴まることはできたが、身体を預けるにはあまりにも心許なく、急に不安に襲われる。
琴は救いを求めるかのように、無意識に客間のドアの方を見遣った。
しかしそのドアの向こうに、見張りの男が二人立っているのを、琴は知っている。
ドアを開けて廊下を歩き、玄関から家を出るという正攻法では逃げられない。
かと言って長居してしまっては、名取総士が戻ってきた時、自分は確実に殺される。
琴はドアを見遣るのはやめて、片手を預けている木の枝をジッと見つめた。
(怖がっちゃダメ! ここから以外、脱出方法はないんだから……!)
琴はもう一度自分を奮い立たせ、もう片方の手も窓枠から離した。
両手でしっかりと枝を掴み、出っ張りから片足を浮かせてみる。
そして、そおっとそおっと枝の方に重心を傾けていく。
肌に吹きつける風の冷たさもあり、琴の身体は、体幹からこむら返りのように小刻みに震えた。
(怖い……けど、こうする以外、方法が……)
この期に及んで怯みそうになる自分を叱咤して、琴は思い切って片手を窓枠から離した。
身体を捩じり、枝に向かって手を伸ばす。
無事に掴まることはできたが、身体を預けるにはあまりにも心許なく、急に不安に襲われる。
琴は救いを求めるかのように、無意識に客間のドアの方を見遣った。
しかしそのドアの向こうに、見張りの男が二人立っているのを、琴は知っている。
ドアを開けて廊下を歩き、玄関から家を出るという正攻法では逃げられない。
かと言って長居してしまっては、名取総士が戻ってきた時、自分は確実に殺される。
琴はドアを見遣るのはやめて、片手を預けている木の枝をジッと見つめた。
(怖がっちゃダメ! ここから以外、脱出方法はないんだから……!)
琴はもう一度自分を奮い立たせ、もう片方の手も窓枠から離した。
両手でしっかりと枝を掴み、出っ張りから片足を浮かせてみる。
そして、そおっとそおっと枝の方に重心を傾けていく。