きみに初恋メランコリー
「でも花音ちゃん、話しかけてる俺が言うのもなんだけど、早く買わないと欲しいものなくなっちゃうかもよ?」

「え、えと、はい……それは、わかってるんですけど……」



言いながら、花音ちゃんは相変わらず暑苦しそうな人だかりに目を向ける。

その視線の先をたどって、そして彼女の弱気な声に、ああ、と俺も納得した。



『なんで、わたしが男の子を苦手だってわかってて……追いかけてきたんですか……?』



初めて会ったあの日、苦しげにそう言った彼女。

花音ちゃんが男を多少なりとも苦手としているのは、すでに承知の事実だ。

確かに、そんな面倒を抱えた彼女があの男女入り乱れて密着した集団の中に飛び込んでいくのは、かなり無理のある話だろう。



「……わたし購買って初めてで、気が引けちゃって……けどいい加減、覚悟し、」

「花音ちゃん、何買うつもりだった?」

「え」



彼女の言葉を遮って訊ねた俺に、花音ちゃんが目を丸くする。

もともと大きな瞳が、こぼれ落ちてしまいそうだ。呆けてこちらを見上げる彼女に対していらない心配をしつつ、もう1度ゆっくり、同じセリフを復唱した。
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