きみに初恋メランコリー
「あれー? 長谷川ー?」

「おー!」

「何やってんのー?」



下からこちらを見上げている男の人──中浜先輩というらしい──と、1階と3階の離れた距離で声を張り上げ、楽しげに会話をする奏佑先輩。

その表情はわたしと一緒にいるときよりも、どこか少しだけ幼く見える。



「俺ー? 優雅に音楽鑑賞ちゅー!」

「バーカ!」

「え、なんで俺今いきなり罵られたの?! なんで?!」



中浜先輩の暴言に、動揺する奏佑先輩。その様子が可笑しくて、思わずくすりと笑ってしまう。

すると中浜先輩が、横に立つわたしの存在に気づいた。



「てめぇ長谷川ー!! 何女の子と一緒にいんだよっ!!」

「あっはっはっは」

「何笑ってんだ!! 一体誰だよ?!」

「ん? コーハイ!」



そう言ってにこやかに笑う奏佑先輩だけど、中浜先輩はなぜかご立腹な様子だ。



「昼休みに女の子とふたりでいるとか、マジシメる!!」

「はは、うらやましー?」

「滅びろ長谷川ぁーッ!!」

「……っ、」



ひときわ大きな声を出した中浜先輩に、とっさにビクッとわたしの肩がはねた。

気づいた奏佑先輩が一瞬こちらを見て、それからすぐ窓の外へと視線を戻す。
< 44 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop