お見合い相手は無礼で性悪?



タオルケット越しにそっと見ると、心配そうな父と・・・
その後ろにあいつが見えた


・・・誰よ!知らせたのっ


『顔が赤いじゃないか!熱は計ったのか?
三好さん!救急車呼んだほうが良いんじゃないのか?』


倒れたと聞いて慌てる父と
その後ろからこちらを見るあいつ

・・・なんなの

苛立つ気持ちと同じくらいに、顔を見るだけで収まりかけた騒がしくなる鼓動



『パパ、大丈夫だから・・』


父を止めるために出した声は酷く掠れていた

それがいけなかったのか


『一翔君、悪いが愛華を送り届けてはくれんか?』


父は余計なことを言い出した

こんな状態なのにあいつと二人なんて
考えただけでも病院送り決定だ

断るつもりの私の脳内を読んだみたいに
父に見えないようにフッと笑った彼は


『はい。お茶でも飲んだら落ち着くかもしれません。お任せ下さい』


私を気遣うように白い歯を見せて笑って見せた


『頼んだよ』



初めて見た笑顔に
また胸が騒ついたのは・・・


一生の不覚




・・・




反論も拒否も許されないまま
気がつけば助手席に座っていた

肩から下がるシートベルトを握り締め
窓の外を見て顔を背け続ける


・・・帰りたい


『このまま送ってください』


思いをそのまま言葉にしたのに


無反応・・・


『あの、家まで送って下さい』


さっきより大きな声で聞こえるように言ってみても


またも無反応・・・


恐る恐る目だけを動かして運転する姿を眺めたけれど

信号で停車してもこちらを見る素振りも見せない



窓ガラスに向かって文句を言うしかない私は
歩行者から見ればおかしな人に分類されるだろう


ため息しか出ない状況に頭を抱えたくなったタイミングで漸く車が止まった


・・・ん、どこ?


見えるのは大きな柱と、柱の間に並ぶ車
どこかの駐車場?


独り言ちるしかない私の耳に


『ここのイングリッシュティ美味しいから飲んで帰ろう』


これまで完璧無視だった彼の声が飛び込んできた


・・・イングリッシュティ?


送ってとお願いしたのに、お茶?


鎖骨に触れるシートベルトをギュッと握りしめ彼を見ることなく無言の拒否をする


そんな小さな抵抗も
クスッと笑って開かれたドアによって簡単に解かれることになった







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