お見合い相手は無礼で性悪?


時計の針がお昼を少し回った頃
彼は苦虫を噛んだような顔で起きてきた


『あら、おはよう』


見ていたパソコンの画面から
視線を移す


『あ、あの・・・なんか僕、
いや、あの・・・っ』


一生懸命記憶を手繰り寄せている姿に
笑いそうになるのを必死で堪える


『ご機嫌いかがかしら?』


『あ、あの、最悪だ、頭が割れるように痛い』


しかめっ面で頭を掻く彼に
冷蔵庫からミネラルウォーターを出して渡すと


『シャワーを浴びてきたらどう?』


バスルームへと誘導する


・・・あ、着替え


とりあえず購入していた揃いのガウンを出し
置いたけれど

肝心の下着がない


サイズも知らない


些細なことにため息を吐いた


興味がないと思われても仕方ないほど
彼の事を知らない


居なくなったと聞いて
心当たりになる彼の友人も知らなければ

立ち寄りそうな場所すら知らない


せめて携帯番号だけでも教えてもらおう


そう思ったタイミングで

真新しいガウンに身を包み、タオルを片手に彼が戻ってきた


『ここには着替えがないから買いに行ってくるわ
とりあえずだからコンビニに売っているものでも良い?サイズ、っ』


彼はそのまま私に近づくと
話しているのを遮るように抱きしめてきた


『・・・あ、あの』


『悪かった』


『・・・?』



頭の上から降る突然の謝罪に固まった


『他の男と楽しそうに話してる君を見て無性に腹が立ってしまって
嫌な思いさせたよな?ごめん』


不機嫌だった理由は
彼の嫉妬だった

素直に打ち明けてもらえたことに胸が熱くなる


『いいよ』


また一つ彼と近づいた気がして嬉しくなった


それなのに・・・


『あ、だめだ、身体が反応する』


『・・・っ』


彼の口から出た言葉に
嬉しい気持ちが半減した



腕の中をすり抜け


『な、によっ!命の恩人に対してっ』


咄嗟に出たのはこんなもの


『命の恩人?』
 

命を助けた程の大事でもないけれど
あのまま放置していたら
間違いなく救急車かパトカーは呼ばれていたはず

早口で捲し立てると


『下着、買ってくるからサイズ教えて!』


逃げるように部屋を飛び出した




近くのコンビニで下着を買い
ついでに何か食べるものを、そう思ったのに
肝心の携帯番号を聞きそびれ

そのまま戻ることにした


下着を渡して、泥と草を払ったスーツに着替えもらった


『着替えもないから送って行くわ』


もう少し・・と渋った彼だったけれど
ガウンで過ごす訳にはいかないと車に乗った


彼を送り届けて、またマンションに戻ると
ベッドに残る泥と草の付いたシーツを洗い
掃除機をかけた


『疲れた』


バルコニーに置いたソファに腰掛けて
コーヒーを飲んでいると



ピンポーンとチャイムが鳴った
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