お見合い相手は無礼で性悪?




・・・もしかして彼かも

小走りで部屋に入ってモニターを覗くとエプロン姿の女性が映っている


『フラワーショップ愛実花ですけど
花束のお届けです』


『は、い?』


・・・花束なんて一体誰からだろう


受け取った大きな花束には

メッセージカードが添えられていた




【~なんでもない日バンザイ~ 一翔】




・・・っ


フフフ・・・っ
込み上げてきたのは
少しの笑いと涙だった


間違いなく彼と私は子供の頃に会っていた


子供の頃大好きだった
ふしぎの国の物語

1年に誕生日はたった1回だけれど
なんでもない日は364日もある
だからなんでもない日バンザ~イという
ティーパーティーの1コマは大人になった今でも頭の中に蘇るシーンで


ピアノでも楽譜を書いて貰った覚えがある
それをピアノの先生を介してでも
聞いて覚えていてくれたとしたら・・・?


興味がないと罵った自分が卑怯に思えて
溢れる涙が止められなくなった

謝らなければいけないのは私の方

・・・彼に電話しなきゃ

花束を抱えたまま

携帯電話を操作する

母の名前をタップしようとした瞬間

ピンポーンと二度目のチャイムが鳴った



モニターに映ったのは少し外方を向いた彼


気持ちを抑えながら『はい』と返事をすると


『開けて』


彼は外方を向いたまま答えた


『はい』


自動ドアとエレベーターのボタンを押して
花束を抱えたまま玄関の扉を開けた


エレベーターから降りてきた彼は
大きなキャリーケースを引いていた


『・・・?』


駆け寄って伝えたい気持ちが
何で?と疑問に負けた


『なに泣いてんの?』


穏やかに笑う彼に頭を撫でられて我に返る


『あ、あの、これ、ありがとう』


そう答えたものの
気になるキャリーケースに向けた視線に気づいた彼は


『これ?今日みたいなことがあると困ると思って。色々詰めてきた』


今朝の泥を忘れたみたいに得意気に笑った




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