お見合い相手は無礼で性悪?




寝室脇のクローゼットは奥行きがある大型

扉を開くと点灯する内部は左右で分けられるようになっている

キャリーケースを開いて
左側に器用に収納していく彼を見ていると


『お腹すいてないか?』


視線を寄越さないままの彼から声がかかった


『そういえば、食べてなかった』


気付いただけなのに無性に食べたくなるのは何故だろう


『少し遅いけどランチに出ようか
夜を遅めにすれば、この時間でも平気だろ』


漸く合った視線と笑うたびに現れる白い歯
その度にドキドキする胸をそっと押さえた


『夜って・・・』


夜まで一緒に居るの?と言いかけて
感じ悪いかと慌てて飲み込む


『この週末ここで過ごすからさ
ほら、予行演習ってやつ?』


そんな私を他所に予行演習なとど軽く言ってのけるから


『へぇ、そうなんだ』


とりあえず軽く流してみた


『へぇって他人事みたいだぞ?君もここで過ごすんだ』


そんな噛み合わない会話の途中で
余りに真剣な顔をするから

瞬きも忘れた


『・・・え、うそ・・・無理』


急に言われたって心の準備が出来ない

ただ、数回デートしただけの
片手程しか会っていない相手と
いきなりここで週末を過ごすなんて


どう考えても・・・無理だ


慌てる私を見ても動じない彼は

いつの間にかキャリーケースを空にして
キッチリ収納し終わっていた


『さて、まずはランチ』


スッカリ馴染んだ彼は
窓の鍵を確認すると
私のバッグを持って手を引いた



・・・



どのタイミングで帰ると切り出そうか
そればかりを考えていた私は

食事中上の空だった


それも想定の範囲内だったのか
ランチの後に向かったのは私の家だった


『ほら、着替えとか用意してきて
僕はお義父さんと話してくるから』


『・・・っ』


クッと喉を鳴らして笑う彼は間違いなく策士だろう

この笑顔に騙されている気がするのに
なんだか強く断れなくて

渋々ながらもキャリーケースを広げている私


途中、部屋に母が来たけれど
週末二人がマンションで過ごすことを喜んでいて
頼みの綱は初めから無かったようだ



結局荷物はキャリーケース2つ分にもなり
手伝うと部屋へ入って来た彼はその量に笑った




< 40 / 51 >

この作品をシェア

pagetop