漆恋を解く僕たちは。
────

「それでは今日はここまでにしましょう」

雅也さんはそう言ってハーブティーを淹れてくれた。



「だいぶ上達されましたね。」

「ふふっ、ありがとうございます。素敵な先生のおかげだわ」

「それにしても2ヶ月でここまで流暢に会話ができるようになったんですから、お嬢様の努力が実っているんですよ。」



用意された勉強部屋は、気に入った本や今並んで座っている大きなソファー、ティーセットなど、いろんなものが持ち込まれ、いつの間にかすっかり快適になった。



この部屋で二人で過ごすことも多くなって、授業が始まってから私たちはとても親しくなっていた。



雅也さんの笑顔も、仕事用よりもあの日見た優しい笑顔が多くなったと思う



──好き…。

表情が増えていくのも、自然体の゛俺゛という一人称も。


近づけば近づくほど気持ちは大きくなっていく



それなのに…


「私、いつかドイツへ行ってみたいわ」

「それでしたらその時は……」

「その時は?」

「あ…いえ。お連れしたい所があるなんて、二人で行くように勝手な事を勘違いをしてしまって。

まさかお嬢様とご旅行なんて…。申し訳ございません」


どんなに近づいたと思っても些細なことですっと離れてしまう距離がもどかしい。


もし私が普通の子だったら、゛お嬢様゛じゃ無かったら一緒に行ってくれたの…?


涙が出そうになるのをキュッとこらえてできるだけ明るく答えようとした。



「雅也さんと一緒に行きたいわ。

素敵な所へ連れていってくれるんでしょう?」



「お嬢様…。ええ、いつかきっとお連れいたします」


そう答えて微笑んだ彼の目は切なくて。


本当は泣いているんじゃないかと思った
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