大好きだよ
悠宇の声が急に低くなる。
怒ったのかなって思って、顔を上げた。
すこしでも動いたら唇と唇が触れそうなくらいの距離に好きな人の顔がある。とてつもなく恥ずかしい。
顔が火照っていくのがわかる。苦しさよりも恥ずかしさが勝ったのか、涙が止まった。
悠宇が私の頬を伝う涙を拭いながら笑った。

「やーっと泣き止んだ。いつも泣かないお前が泣くとはな(笑)びっくりしたよほんとに。

……なぁ。俺の好きな人…誰か知りたい?」

「えっ…。」

知りたいよ。すごく。
もし、今ひとつ願いが叶うなら。
キミの口からこぼれる名前は私であってほしい。
でも、知ってしまったら、今よりももっと苦しめられるんだ。なら、聞かない方がいい。

私は、キミに果林って呼ばれること自体に弱いんだ。
いつも呼ばれる度に胸が踊るのを知っていた。
私が大好きなキミの声で違う女の子の名前を聞くのはあまりにも残酷だよ…。

「ううん。いいや…。」

なんとか笑ってみせた。ちゃんと私、笑えてたよね?
大丈夫だよね。うん、きっと大丈夫。
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