君の指先が囁いてる
階段を上がってくる音がした


母ちゃんが来た


『翼、話しって?』


『母ちゃん、俺、彼女が出来たんだよ』



『彼女?
翼....
良かったなぁ、もしかして、この前、翼に手紙をくれた子か?』

『そうだよ。椎ノ木茜って言うんだ、俺がボランティアしてるセンターで知り合ったんだ』


『翼、大事にしてあげるんだよ、けど....』


母ちゃんが話すのを止めた


『母ちゃん、けど何だよ?』


俺は母ちゃんの言いたい事がわかった


母ちゃんは茜の親の事を気にしてるんだろう


『母ちゃんの言いたい事は分かる』

母ちゃんは一言だけ


『翼、頑張れ』


と言い部屋を出て言った


俺はパソコンを開き小説を書き出した


書いては消しての繰り返しだけ自分のペースで進んでる


パソコンから手を離すと茜の事を考えてしまう



人生初の恋人



君の恋人として季節を感じたいよ



茜....


俺の心の鍵は君に預けたよ



君が鍵を閉めたい時は鍵を閉めて良いんだからね....



健常者と障害者の付き合いは難しい事も俺は、わかってるからな....


君が鍵を閉めない限り俺は君を愛し君を幸せにしたいよ




このまま月日が流れる事を祈った



まさか....


絶望の日が来るとは俺は、まだ気付いていなかった





< 28 / 91 >

この作品をシェア

pagetop