とろけるようなキスをして[短編]完

 
今の会話でお分かりの通り。
わたくし、渡瀬あやは、さっきの男「愁くん」もとい、「川上愁」が好きなのです。
 
 
川上愁との出会いは突然だった。
 
 
川上愁は隣のクラスのヤツで、ある日突然私の教室に来て、
 
『渡瀬あやちゃんって、どなたですかー?』
と叫んできた。
 
 
引き気味に、「私、ですけど‥」と言うと、
 
『渡瀬あやさんっ!!』と、大声で名前を呼ばれ、
びっくりした私まで「は、はいっ!」と大声で返事をしてしまった。
 
 
恥ずかしい‥と思い、黙って下を向いてると、
 
『一目惚れしました!
オレと付き合って下さいっ!!』
 
と、聞こえた。
 
 
あ、れ?コレって私に言ってる‥よ、ね?
 
そう思い、顔を上げてみると‥
 
真剣な目でコチラを見ている。
 
 
うん。確実に私に言ってる。
 
 
私に好きな人はいない。
 
でも、好きでもない人とは付き合えない。
 
だから返事は決まっていた。
 
 
「ごめんなさい‥」
 
 
 
川上愁は、私が告白を断った次の日から、毎日、朝と昼休みに私の教室に来るようになった。
 
.
< 2 / 21 >

この作品をシェア

pagetop