復讐をするまで忘れずに…
「あっ、今日もお疲れ様です」




それが舞さんの一言目だった。




「調子は良くなった?」



私はそう聞いた。




「あ、はい。多少は」




それは良かった。




「あ、そうだ。昨日の続きですよね?」




舞さんから振ってくれた。




そっちの方が私的にもやりやすいし良かった。




「うん。小学生の頃のこと、教えてくれる?個人的にも気になるし、もしかしたら事件の手がかりにもなるかもしれないから」




私はそう言った。




でも、事件の手がかりになるとは本当は思っていなかった。




だって小学校の時のことを今さら犯人が根に持ってやるわけないもん。




「はい。では」




そうして、舞さんの小学生の頃の話が始まった。



「わたしは、小学生の時、姉の心と一緒に孤児院にいたんです。でも、ある時、私は、火事にあったんです。その孤児院で。友達とかもたくさん亡くなって。心と私は生き残ったんですけど。生き残った人、ほんとにわずかで。私、友達が助けてって言ってるのとか忘れられなくて。辛くて。だから、小学生の時のこと思い出したくなくて。小学生の思い出といえばこれが出てきちゃうから。」




そう言った。



私と同じだ。




もしかして、同じ火事?



舞さんは今、25歳だからあの時は7歳。



小学生だ。




しかも、私のように生き残ったのは僅か。



桃音も亡くなったし。




「あ、ありがとう。教えてくれて。もしかしてさ、その孤児院って『天空』っていう名前?」



『天空』は私が行ってた孤児院の名前だ。



今はもう無くなっちゃったけど。




園長が、「みんな、誰でも、良い将来が待っている」っていうことでつけたらしい。




それが園長の口癖でもあった。




「はい。知ってるんですか?『天空』のこと。」




えっ?じゃあもしかして、最近起きた事件って全部、それに関すること?



そんなことないか。




「私も『天空』にいた。妹、あの火事で亡くなっちゃったんだよね」



私も言った。




「えっ?そうだったんですか。」




私は、一度病院を出て、波瀬先輩に電話した。




「もしもし、波瀬先輩ですか?岡辺です。」



『はい。波瀬だが。今はお前、高橋舞の事情聴取じゃないのか?』



先輩がすぐに出た。



私はすぐに状況を説明した。



場合によっては、この一連の事件があの孤児院と関係があると分かれば、そのまま、舞さんにもっと事情聴取ができる。



今回の被害者の名前も出せる。




「あの、今回の被害者、高橋心さんはとある火事で生き残った人だそうです。ちょっと気になるので、他の人がその火事に関わってないか調べてくれませんか?それか、とある孤児院で起きた火事なんですが、その孤児院にいたかどうかでもいいので」



私はそう伝えた。




沈黙はしばらく続いた。




『もしもし、俺だが。調べてみる価値はあるようだな。しかし、舞さんにはこのことは何も伝えないように。今まで通りで』




もしかしたら私、事件の進展へと繋げたかもしれない。



そう思うと、嬉しかった。
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