俺を好きにならないで
もちろん動揺しないわけがない。


今、ものすごい勢いで手汗をかいているのがいい証拠。


彼がなぜ私の手を握っているのかが分からない。


こんな経験今までなかったからどうしていいの変わらず、その場で固まってしまった。


かろうじて口だけは動いたので彼に問うた。



「な、なんでしょうか?」



先程まで寒いと言って縮こまっていた私からは考えられないほどに、体温が上昇していた。



「俺、ココア持ってる」


「はい?」


「間違えて買ったから別の飲み物を買おうと思う」


「はい……」


「だからこれあげる」



そういって彼が差し出してきたのは私が欲しいと思っていたココアだった。
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