牢獄の中のフェイト
一目惚れ
うるさい。
朝9時。枕の横で鳴り響く目覚まし時計を強くたたく。
いかないと…単位もらえない…。
昨日、夜遅くまでバイトをしていたからか、その疲れがいまだに取れない。
全身に鎧を身につけているような重い体を起こし、開かない目をこすりながら大学に行く準備をする。
ああ、ねむい。授業行きたくない。
そう思っていると、手元にあった携帯がバイブを鳴らしながら光った。
➖なのは!ごめん!今起きた!
携帯画面にメッセージが表示される。
親友のえりだ。家から学校まで2時間かかる彼女が、今起きたということは完全に遅刻である。
➖プリントとか回収しておいてほしい!3限からいくから!ごめん!
進級早々、遅刻って。
呆れた私は重い足を無理やり動かして大学へ向かった。
大学3年生の春なのに、いつも通りの朝。
サラリーマンと一緒に紛れてバス停に並ぶ。バスを降りると、人の行き来が忙しない駅へ。電車に揺られながら今日のお昼ごはんのことを考える。最寄り駅に着き、改札を出て学校へ歩く。
「なのは!おはよ!」
後ろから肩を叩いて挨拶をしてきたのは、1個上のサークルの先輩、ゆきえさんだった。
「ゆきえさん。おはよーございます。」
「どーしたどーした、なんでそんなテンション低いのさ!!」
疲れと戦う私と対照的で明るく元気なゆきえさんが眩しい。
「昨日、バイト12時間働かされて眠いんすよ。」
「それは大変。お疲れ様だね。でもバイトばっかじゃなくて、サークルのこともしっかり考えないとだぞ!」
サークル。そんなものもあったな。
私は大学の赤門を横目に、どっと疲れが重なる言葉を投げかけられた。
私は1年生の頃から大学のソフトテニスサークルに所属している。
一目惚れ。
誰しもが耳にするこの言葉。
今年の春から大学三年生になる私には、今までの人生で異性に一目惚れをすることなんて1回もなかった。
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