契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
「…悠さんはヒーローみたいですね」

「そんなかっこいいものじゃない。
凜が怖がる前に助けてやれなかった」

「ううん。混乱してる頭の中に、悠さんの声だけがちゃんと届いたんです。
だから、私にとってはヒーローなんです」

顔をあげて、悠さんの頬に触れた。

外はもう寒いから、帰って来たばかりの悠さんの頬は冷たい。

もしかして急いで帰ってきてくれたのかな。

「ありがとう、悠さん」

じっと私を見つめていた悠さんが、なぜかソワソワした様子で目線をそらし、口元に手を当てる。

「…マズイな。俺も凜が女神みたいに見える。
あとでぐったりして動けなくなるくらい抱くからそのつもりで」

「えっ」

「それはまあ…今日に限っては冗談にしておくけど…」

なぜか眉を寄せてもごもごする悠さん。

悠さんは小さく息を吐いて、丁寧に髪をなでて微笑んだ。

「今日はゆっくり休もう。
俺が隣にいるから」

「…はい」

たくさん寝たからもう眠れないと思っていたけど、悠さんの胸にくっついて鼓動を感じていたら、私はいつの間にかまた眠りに落ちていた。

< 122 / 175 >

この作品をシェア

pagetop