契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
「患者さん多いわね。いつも待合室がいっぱい」

「予約してても、待ち時間はかなり長いみたいです」

「そう。よくないわね。大きな病院だからこそ、患者の負担を減らすシステムを持った考えていかないと…」

深刻な顔つきでそう言う菊川先生は、真面目で患者思い先生なんだと思う。

…悠さんに、少し似てるな。

「…菊川先生は、風間先生と元々同じ病院にいたんですか?」

「ええ。研修医時代にね。そのあとは別の病院に就職してたの」

さらっと答える菊川先生。

私はごくりと息をのんで、思い切って問いかける。

「…どうして、風間先生と別れたんですか?」

菊川先生は大きな目をさらに見開いて、一瞬歩みを止め、それからまたゆっくり歩き出した。

「悠…風間先生から聞いてたのね」

ふふっと苦笑いをした菊川先生は、静かに話し始めた。

「…ひどい別れ方をしたの。若かったのよね。
勝手にヤキモチ妬いて喧嘩して、売り言葉に買い言葉で心にもないこと言っちゃって。
何日かして冷静になって謝ったけど、風間先生はもう信じられないって言ってヨリを戻すことはできなかった。
だから、昨日会って普通に話をしてくれて正直ホッとしたわ。
口もきいてくれないと思ってたけど、もう彼は何とも思ってないのね」


…違う。ずっと引きずってたのに。

8年も彼女を作れずにいたのに、何とも思ってないわけないじゃない。

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