ブラックサンタクロース
「ちゃんとメシ食ってます? インスタントでばかり済ませちゃダメっスよ」
「田舎のおかんか」
「いやいや冗談抜きで。このとのろ寝不足でしょうし、せめて栄養あるもん食って下さいねー」
「言われなくても」
「ほんとっスか〜? 俺のこと、全然メシに誘ってくれませんよねえ。いつもなに食ってるんです?」
「なんだ。お前、俺にたかりたいのか」
「ち、違いますよ〜!」
いつか俺は上原を失望させてしまうかもしれない。
それでも。
【あなたは、ヒーローですね】
【だって、悪い人しか食べないし。世の中が少しずつよくなってるでしょ?】
俺には、そんなことを言ってくれるやつがいる。
それだけでこんなに救われる気持ちになる。
出逢わなければよかった、なんて。
少なくとも今は、思っていない。
出逢えてよかったと。心から想う。
「上原」
「はい!」
「職権乱用してサインとか写真ねだんなよ?」
「なっ……、わかってますよ! あくまで仕事できてますから。そんなことするわけないっス!」
「まあ。握手くらいは、してくれるかもな? 命張って守ってやれば」
「握手……!? いやいや。あの天使とは。触れ合っちゃダメっス。それをしていいのは握手会とか、公式的なやつです」
ほんと、お前は融通きかないくらいまっすぐなやつだな。
「守ろうな」
「はい……!」