いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


「変わらないな。昔も、そんな風に励ましてくれた」

「そ、そうだっけ?」

「そうだよ。それが、失敗したやつだからよく覚えてる」


あ、もしかしてその流れからの『沙優ちゃんの作ったのなら』だったのか。

昔の私はなぜ失敗作を食べさせたのだ。


「わ、忘れていいよ」

「忘れないよ。君とのことは、忘れたくない」


愛しさを滲ませた声で囁かれ、胸が切なく締め付けられる。

彼の背に、腕を回して抱き締め返してもいいものか。

そうしたい気持ちはあるものの、そうしてしまったら流されてしまう気もして。

けれど、間近で香るいち君の優しい香りに絆されて押し退けることもできずにいれば、抱き締めている彼の腕に力が込められる。


「ねえ、沙優。俺にはやっぱり君しかいない」


君の中でも俺が一番になるといいな。

眉を下げて微笑むいち君の願いは、私の心にじわりじわりと広がり、甘さを持って染み込んだ。












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